大学職員の仕事と聞いて、「学生課」と並んで多くの方が想像するのが「教務課」の仕事ではないでしょうか。
履修登録や教職資格・留学等、学生時代に学業のことで悩んだ際に相談に向かうのが教務課の窓口だったと思います。
もちろん、そういった窓口での相談対応も紛れもない教務課の仕事ですが、窓口の奥では学生からは見えない様々な業務をとおして教務課の職員は大学の教育を日々サポートしています。
教育という大学運営の根幹の業務を担う教務課の仕事は、責任感と緊張感が伴う場面も多いです。
また、時には夜遅くまで仕事を行うこともあるかもしれません。
しかし、それを乗り越え、より良い学習環境のサポートや課題解決が達成できた時など、やりがいにも溢れています。
教務課の仕事は大変な面もありますが、大学職員の組織の中で教育に携わることができる数少ない部署のひとつです。
大学職員になりたいと考える人の中でも多くの人気を集めるであろう教務課の仕事を紹介していきます!
大学職員の教務課の仕事
教務課は、学生の入学から卒業までの学業を様々な面から支援し、大学の教育の質を保つことが使命となります。
教育の質は学生の成長や満足度に直結し、且つ、社会に出る前の最終教育の場である大学の意義・機能を証明することに欠かせない要素のひとつです。
例えば、高校時代は学業の成績がパッとしないし、部活動で光る活躍をしていたわけでもない友人が、大学卒業後に誰もが知る有名企業に就職したり、英語が堪能になっていたりと、大学4年間で成長して見違えるような存在になった方が皆さんの周りにもいたと思います。
そのような方は、自身の努力がもちろん1番尊重すべき点ですが、おそらく通っていた大学の教育の質が非常に良かったのだなと想像します。
実際に大学職員になり、様々な大学の特色ある教育を理解したうえで、私が知る大学4年間で見違えるように成長した友人の卒業大学を思い返すと、成長できる教育環境が整えられていたことも大きいのだなと感じました。
そのような経験から、学生が成長できるかどうかの一端を教務課の職員は握っていると私は考えます。
私がもし教務課に異動になったら、そのような気持ちを忘れずにこれから紹介する様々な仕事に取り組んでいきたいと思います!
履修管理
毎年春に行う学生の履修登録に向けての準備、管理は教務課の重要な仕事のひとつです。
学生時代は何気なく行っていた履修登録ですが、実は大学側の準備は約半年前から始まります。
約半年の間にどのような準備を行うか、大学によってもちろん異なりますが、おおよそのスケジュール感としては以下のとおりです。
- 8月:次年度の大学全体のカリキュラム、授業方針を教員へ伝える。
- 8~9月:次年度の各学科の時間割、授業等、履修準備に必要な情報をまとめる。※教員の作業
- 10~11月:教員から提出された履修情報に必要なデータをまとめ、履修管理のポータルサイトへ反映、構築、入念な確認を行う。
- 12月~2月:教員にポータルサイトの確認を依頼。誤りや齟齬がないか入念な確認を行う。
- 3月:履修登録がスタート。
特に秋から冬にかけての履修情報データのまとめ、確認の作業は非常に神経を使う作業であり、1月~3月は教務課の繁忙期となる時期でもあります。
教員から提出される授業データは、学部学科の数や学生数・教員数の規模によって異なりますが、年間で小規模大学でも約500コマ、大規模大学だと約2000コマの授業を管理していくこととなるため、仕事の重要性も相まってどの規模の大学も教務課は職員数が他部署に比較して多くなる傾向にあります。
私の大学も学生支援系の部署が一部混ざっていることもありますが、職員の人数が1番多い部署となっています。
履修管理の仕事もそうですが、教務課の仕事の多くは自分1人では完結することが難しく、チームで1つの仕事・目標に向かって取り組んでいくことが多いのも特徴です。
そのため、協調性やチームワーク、調整力など多くの力が問われることになります。
大学職員のどの部署でもいえることですが、教務課の仕事をイメージして選考に臨む方は特にそこを強調することがポイントです。
授業運営・教員サポート
前述の履修管理もひとつの授業運営・教員サポートの取り組みの1つですが、それ以外にも教務課の仕事には授業や教員のサポートを行う業務は多くあります。
例えば、以下のような例が挙げられます。
- 時間割の作成時:教員の希望や教室の設備・空き状況を考慮して、効率的な授業配置を行う。
- 授業スケジュールの調整:様々な諸事情による急な授業変更や休講、補講の調整を行い、学生や教員に連絡。
- 授業教材の管理:授業に必要な教材や資料を管理し、必要な場合は手配・配布を行う。
- 試験運営:試験の結果を集計し、成績を入力・管理。
- 学外連携:交換留学プログラムの運営や学内イベントの実施、学外団体・他大学との連携業務。
細かく見ていくともっと多くの業務がありますが、いずれの業務にも通じていえるのが教員とのコミュニケーションが必須ということです。
教務課の仕事は教員の希望を聞いたり、教員の指示を受けての仕事が多くなりますが、すべての希望を叶えるのは物理的に不可能な場面も多く、その際にいかにしてうまく方向転換を出来るか、調整ができるかがコミュニケーションをとるにあたってのポイントとなります。
また、時には教員から連絡がなかなか返ってこない場合や期限が過ぎても教員から提出物が出てこない場面も度々あります。
その際に、教員に対して臆せずしっかりと言うべきことは言う気持ち・姿勢も必要になってきます。
企業に置き換えると、社内の同僚や上司に対してそのようなコミュニケーションをとるのは簡単では?と思うかもしれませんが、教員と職員という職務や役割、立場が異なる大学という組織では時にはそれがやりづらい場面も出てきます。
日頃から教員とのコミュニケーションを大切に良好な人間関係を築くことによって業務の効率化が図れそうなので、教務課で働くにあたってのポイントだなと思います。
免許・資格課程の運営
特定の科目を履修、単位を取得することで取得できる、免許や資格課程の運営・支援を担当します。
在学中に所定の課程を修得し、以下のような免許・資格を実際に取得された方も多いのではないでしょうか。
- 高等学校・中学校・小学校の教員免許
- 学芸員
- 司書・司書教諭
- 日本語教員
教員免許や学芸員の資格を取得にあたっては、学生が教育実習や博物館実習を履修しなければならないため、そのサポートや相談対応等も行うこととなります。
学生はもちろんですが、教職課程に関係する教員とも密なやり取りを重ねながら細かな準備を進めていくこととなるため、担当する教務課の職員にも大変さと責任が伴います。
ただ、自分がサポートした学生が無事に教員免許状を取得できた際は、自分事のように嬉しいのではないでしょうか。
職員は直接的に学生に教育を行うわけではありませんが、このような間接的な支援をとおして学生の力になれるのは大きなやりがいだと感じます。
FDの実施
FD(ファカルティ・ディベロップメント)は、教員の教育能力向上を目的とした取り組みです。
FDは、教員が教育活動を効果的に行い、学生に質の高い教育を提供するために非常に重要で、2018年に文科省の省令により義務化されて以降、各大学で工夫を凝らしたFDが実施されています。
FDを担当する部署は、大学によって教務課や学生支援課が担当したり、教育・研究支援系の部署が担当したりと様々です。
FDは教員のための研修なので、実際に行うのは教員となりますが、職員は研修で使用する資料作成・教室の確保・当日の運営サポートなどの事務的補助が役割となります。
ですが、サポートだからといって気を緩めてしまうと、教員との意識の差や考えのミスマッチにより、FDの実施に大きな歪が生まれてしまいます。
他の業務にも通じることですが、職員という立場でもFDの意義や目標を自分事としてしっかりと把握して、運営補助に携わることが重要です。
教員・学生の相談対応
これまで紹介してきたすべての業務において発生するのが、相談対応です。
教務課の窓口の前を通ると必ず誰かしら職員が、学生や教員と相談対応を行っています。
時には相談対応が長引いてしまい、その分勤務時間も伸びてしまうかもしれません。
しかし、教員や学生が安心して教育・学業に集中できるよう、親身で正確な対応を心掛けることが大切です。
大変な時もありますが、相談対応・サポートをとおして学生の成長を実感することが出来る大きなやりがいにも溢れています。
大学教育の質向上を支える重要な役割
教務課は、学生の学業を支える重要な役割を担っており、大学の教育活動が円滑に進行するための中心的な存在です。
学生や教員との連絡役として、また大学の教育方針の実現をサポートするために、窓口の奥では様々な努力を行っています。
やること、覚えること、チームワーク、必要なスキル、コミュニケーション能力など、教務課の職員には多くのことが求められますが、その経験や得た力は必ず後々の自分の強みに繋がっていきます。
教務課で働きたいことを表現する際は、学生側の視点と職員側の視点の両方から、教務課で働きたい理由を作り上げていくと説得力のある内容になると思いますので、参考にしてください!